伝導加熱による火災を防ぐ
8月3日の築地場外市場のラーメン店が火元とみられる火災は記憶に新しいところですが、その火災は伝導加熱による壁内炭化による発火が原因でした。
ラーメン店の厨房の厨房の壁は木製の下地材をステンレスの仕上げ材で覆ったもので、出火原因は、ガスコンロの熱がステンレス板の裏側に伝わって炭化し、蓄積した熱により木製下地が発火する「伝導過熱」だったとみられています。
東京消防庁は、9日に市場の立ち入り検査をし、防火設備や電気設備の維持管理状況や、防火扉が開閉できる状態にあるか否かを確認するほか、厨房のガスコンロなどに近い壁の温度を計測し、炭化しているか否かを確認したうえで、従業員らにガスコンロと壁との適切な距離を指導。伝導過熱の特徴や防止方法などを記述したリーフレットを配布したとのことです。
【東京消防庁のリーフレット】
一般的な木材では、外部の火が燃え移る引火温度は250度前後。外部の火がなくても燃え出す発火温度は450度前後と言われ、伝導過熱で炭化した木材は、長期間にわたって加熱されると、木材が含有している水分が蒸発し、木材の内部に空隙ができ、そこに空気がたまり、蓄熱性が高まり、燃えやすくなると言われています。
そのため掃除のしやすさや防火の面で施工された金属板の裏にある下地の木板が、ガスコンロの近くにあるなどの状況下では長時間をかけて蓄熱し、発火点を超えることがあります。また、金属板で覆われていることにより、知らず知らずに劣化している内部の状況がわかりづらくしていることもあります。
飲食店だけでなく、住宅でも伝導過熱が原因となる火災が発生することは珍しくありません。
建築基準法ではキッチン周りは準不燃材仕上げにすることを求めており、システムキッチンなどはコンロと壁の間を最低150mm離すようになっていますが、キッチンのコンロ台に直接ガスコンロを置く場合などは、コンロと壁の距離が短く、伝導加熱により壁内の木部の炭化を起こしやすくしています。
一度ご自宅のコンロ周りをぜひ点検してみる事をお勧めします。