首都直下型地震に備える Part-5 「地震に強い家を創る。」「繰り返す揺れに強い家を創る。」
以前にもこのブログで紹介しましたが、2016年6月に起きた熊本地震では、短期間に2度の震度7が起きたため、1回目の揺れには耐えられた建物も2回目の揺れでは、支えきれずに倒壊してしまった建物が多くありました。
さらに、2000年に改訂された建築基準法の新々耐震基準の住宅の中でも倒壊した建物がありました。
今回のテーマは熊本地震での実際に起きた被害を教訓に、現在の建築業界で議論されているとるべき最新の耐震性能についてお話ししようと思います。今回の熊本地震から分かったことは、今まであまり問題視されていなかった「直下率」の数値が建物の耐震性に大きく影響することです。
「日経ホームビルダー」がなぜ倒壊に至ったかの原因を究明するため、倒壊した住宅の図面の分析の結果、「直下率」の低さが有力な原因の一つではないかと思われるという見解が出されています。
「直下率」とはなにか?
「直下率」とは、平面プランを見たときの1階と2階がつながっている柱や耐力壁などの壁が2階の柱や壁の真下に1階の柱や壁があるかどうかの割合のことで、構造的なバランスを評価する重要な指標として使われています。
今回熊本の地震では、倒壊した住宅の壁量は基準以上でしたが、柱の直下率が47.5%(適正直下率60%以上)、耐力壁が17.8%(適正直下率50%以上)で、特に耐力壁の直下率が小さいプランとなっていました。
このように耐震基準を満たすことはもちろんのこと、間取りを考えるうえで、柱や壁の位置も併せて考えることが重要とみられています。
今までのお話は「耐震」についてですが、繰り返す揺れに耐えうるために、建物の変形をできるだけ少なくすることが、2度、3度繰り返す揺れに対して、抵抗する力となります。
そこで注目されるのが、何度かご紹介している制震ダンパーなどの「制震材」です。
およそ30坪2階建ての木造耐震住宅で60万円から100万円ほどのプラスの「制震材施工」の費用が掛かりますが、「繰り返す揺れ」に耐えうる建物を創るうえで重要な要素となっています。
下記にいろいろな制震材の画像をアップしておきます。
制震材にはいろいろな製品がありますが、それぞれ「粘性の油圧の抵抗を利用」や「アルミニウムの粘りを利用」、「ゴムの変形エネルギーを熱に変換する」など、地震の揺れを吸収し、建物の変形を軽減して損壊を防ぎ、繰り返す揺れに有効なものです。
もちろん「高耐震システム」があってこその「制震システム」なのです。
全5回連続してお伝えした -首都直下型地震に備える「地震に強い家を創る。」- のブログテーマはひとまず終了させていただきます。
このブログテーマ「首都圏直下型地震に備える」が、新築や住宅リフォーム、リノベーションをお考えの際に、皆様の大切な命とお住いを守る一助になれば幸いです。
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