建築家の仕事、建築士の仕事-2- ドアの開く方向=内開きと外開き
前回のブログを書いていて、思い出したことがあったので、書いてみます。
今回のブログのテーマも「建築家の仕事、建築士の仕事」です。
皆さん日常生活で気にしたことはあまりないとは思いますが、ドアの開閉方向です。引戸や引き違いではなく、開き戸のお話です。
日本では、玄関ドアや勝手口ドアは宅内から外へ向かって開く外開きです。
玄関ドアは、欧米では、内側に向かって開く内開きです。洋画を見たときに観察していただくと、「なるほど!」と気づかれるはずです。
その理由は、主として防犯上の理由で、外開きだと外からこじ開けられやすいことと、外側へ引っ張られた時にノブを抑えて防戦するのに不利だからです
内開きの場合は、中に障害物を置いたり、体で押さえても防戦しやすいですよね。
ホテルなどのドアも内開きですが、その理由としては廊下部分が避難路になった場合、外開きだと非難の妨げになることが挙げられます。
では日本の玄関ドアは、なぜ外開きか?
日本は玄関で靴を脱いで室内に上がります。この場合は、内開きだと脱いだ靴が邪魔になることが一つ目の理由。
二つ目は日本の気候にあります。玄関の庇が小さい場合、雨ががたやすく室内に侵入します。
ドアにかかった雨水が自然に外に流れ出るためにはドアの内側を少し立ち上げて外開きにする方が有利です。
いわゆる雨仕舞の関係で日本の玄関ドアは外開きになっています。サッシメーカーの玄関ドアや勝手口のカタログを見ても内開きの玄関ドアは記載がありません。
屋内に入ると、洋室のドアは基本内開きです。これも廊下側に開くと歩くのに邪魔になるのが理由の一つです。
但し、トイレのドアは、以前はスリッパを回避するために沓摺(くつずり=ドアの下の見切り材)を数センチ上げて内開きにしていました。
最近ではトイレの中で倒れたときに、内開きだと体か邪魔をして救出に支障をきたすため、最近では外開きにして、なおかつ緊急の開錠ができる錠前を付けるようになりました。
前置きが長くなりましたが、今日のテーマは、「建築家の仕事、建築士の仕事-2-」です。
私が数年前に知り合いの工務店から相談を受けたことがありました。その工務店は建築士事務所が設計した住宅を施工することが多い工務店です。
相談の内容はというと、「玄関ドアと2階のバルコニーのドアを内開きにするという設計の図面をもらったんだけど、どう思いますか?」というもので、答えは簡単!
「日本では内開きの玄関ドアは避けるべき。絶対雨が入るよ。1階の玄関の庇を大きくして、なおかつ玄関を大きく取ればどうにか内開きでも行けるかもしれないが、2階のバルコニーは、雨が入ってきたときに、100%の確率で1階に漏水するので、設計変更を依頼すべき。」と答えておきました。
その工務店の社長は、一応設計変更をお願いしたが、頑として設計変更には応じてもらえず、「先生」には仕事をもらっている工務店の立場では、庇を大きくしてもらうしか対処できずに、設計図通りに内開きのドアで家は建ったそうです。
数か月後にあった時にその後のことを聞きましたが、案の定、1階に雨漏りしたとのこと。その後の顛末は聞いてはおりません。